書評-星野リゾートの教科書

書評

こんにちは!トモです。

昔、あるテレビ番組で綺麗な雲海がテラスの下に流れる雲海テラスというのを見て、なんだこのホテルは!?って衝撃を受けたのを覚えている。

それが、今日ご紹介する本の著者が経営する星野リゾート トマム。

著者の星野さんは経営で迷ったとき、教科書としていろんな本を読み、実践して今の成功を掴まれた。

その星野さんが教科書にした本を惜しげもなく公開しているのが「星野リゾートの教科書」

星野リゾートの教科書

そこにはコモディティ化を乗り越える戦略が具体的に書かれていた。

製品やサービスの質に差がなくなったとき、お客様は買いやすい会社、手間をかけずに安全に早く欲しい物が手に入る会社を選ぶ。

星野社長は同署のこんな指摘に衝撃を受けた。「コモディティ化が進んでも、アクセスを高めることで他社に差をつけて勝つ。そんなビジネスモデルがあることを知った。」

今の時代、ほとんどのサービスや製品はコモディティ化していると言ってもいい。どこで買っても一緒なら、消費者は買いやすい、手間のかからない店から買う。

そこで一人勝ちしたのがAmazonのような企業ではないだろうか。

店で買ってもネットで買っても手に取る商品は一緒。その上Amazonで買えばポイントが付き、家に配送してくれ、出かける手間が省け、クリック一つで購入することができる。

アクセスが非常に高くなおかつ信頼できるから皆Amazonで買う。著者はそれをホテル経営にも活かし成功した。

著者が行ったのは、電話で宿泊予約するお客様のアクセスを改善するために、統合センターを新設し、オペレーターを電話対応のプロに当たらせた。

「ホームページ内での予約ボタンの置き方や写真の使い方を変えるだけで、宿泊予約の件数は大きく変わる。」

こういったところまで注意を払い、ケアできるセンスが素晴らしい。

「真実の瞬間」の対応力を上げるには、スタッフが自分で考えて動く体制が不可欠である。では、考えるためには何が必要なのか。

「判断の根拠となる情報を持つべきだ。」と考えた星野社長は、さまざまな経営情報をスタッフに対して積極的に公開した。

「売上高、利益などの情報を共有することで、スタッフは星野リゾートの意思決定の理由、プロセスを深く理解するようになる。それはスタッフの的確な判断につながる」そういう発想をしたのである。

真実の瞬間とは、企業と顧客の接点の事を言い、現場の従業員が初めて顧客に対応する15秒間の事をいう。

この15秒で顧客は企業についての判断を下す。もう一度利用するか、もう二度と利用しないかは、サービスを受け終わってから判断するのではなく、始めの15秒で全ては決まってしまっている。

この15秒間を最高のモノにするためには、スタッフが自分の頭で考えて柔軟に対応することが求められる。

そのための判断基準に、組織としての星野リゾートの意思決定はどのように行われるのか、そのプロセスを学び、理解することで、現場の従業員は真実の瞬間に、最高のもてなしを持って顧客に接することができるのだろう。

部ランチャー度の理論がユニークなのは、お客様の要求が自分たちの目指している製品・サービスと合致しない場合、「要求を無視するべきだ」と断言している点である。

旅館・ホテルはすべてのお客様を満足させようとするあまり、サービスを増やしすぎることが少なくない。これはコスト増を招き、経営を圧迫する。

「ターゲットが絞られていないと、どのお客様にとっても不満は無いが、感動も無い施設になってしまう。共感度の高いコンセプトがあれば、スタッフにとってわかりやすい判断基準になる。

どのサービスが必要で、どのサービスを切り捨てるべきか、すぐに分かる。」

僕もその通りだと思う。日本では明治から商業が発展し、お客様の神格化まで行われた。

「お客様は神様」小売業などで特によく聞く言葉である。でもこれを盲目的に受け入れていてはいけないと思う。

お客様は時には企業のコストにもなりかねない。

例えば、昔僕がオーストラリアのレストランで働いていた時の事。ホールスタッフとして、お客様のご飯の食べるスピードとお客様の注文したメニューを考えながら、

キッチンに次の料理を作り始める合図を送っていた。しかし、僕が働いていたレストランというのは上級レベルであったが高級まではいかない。

それは立地やメニューの値段、サービスで図った場合だ。

殆どのお客様はそれらの全てに納得してご飯を食べに来てくれていたが、何回も繰り返し使ってくださるリピーターの老夫婦が1組いた。

この二人は常に完璧を求めていた。自分達が食べ終わった瞬間にお皿は下げられ、次のメニューがテーブルに並ぶことを期待していた。それも本当に完璧のタイミングで。

僕たちはよく利用してくださることもあってできる限りの対応をしていたが、お客様は彼らだけではない。他にも何十組といるお客様のランダムな対応をしなければならない。

忙しい時はそれこそ戦場のようだった。

そんなある日、その老夫婦がとても怒った様子でクレームをつけてきた。その内容はこういうものだった。

「私たちは完璧なタイミングで料理を出してほしいの。1秒たりとも待たされるのは不快だわ」と。

もしこのようなお客様の要望を全て一々聞いて対応していれば営業など成り立たなくなる。それこそ僕達の生産性はガタ落ちする。そこに見えないコストが発生していると僕は考える。

だから世界中どこに行ってもピンからキリまでサービスが提供されているのだ。このようなお客様は僕達の求めるレストランのあり方に合致しない。

お客様がそこまで完璧なサービスを求めるなら、高い金を払って最高級のレストランに行き、自分達が求めるサービスを受ければよいだけだ。と僕は思う。

企業にはそれぞれ明確なターゲットが存在する。ターゲットが明確であれば自分達がしなければいけないことも明確になる。

ファーストフード店に食べにくるお客様が求めているのは早くて安くて美味しい料理であって、重厚なおもてなしでもなければ、高品質のテーブル席でもない。

もし全世界をえるとも其霊魂を失えば何の益あらんや。人生の目的は金銭を得るに非ず。品性を完成するにあり。

これは星野社長の祖父のために星野リゾートと裕香里がある内村鑑三さんが残した成功の秘訣の一節だ。

まさにその通りだと思う。そもそも地位、富、名声のようなものは得ようと思って努力しても、時の運や、タイミングなど外的要因に左右される。

しかも、死んでしまえば、あの世には持っていけない。

そんなものを掴もうとすることを人生の目的にしてはならない。人生の目的とは人格を高めること、品性を磨くことにあると僕も思う。

って話でした!

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