書評-日本企業の勝算

書評

こんにちは!トモです。

このブログは主に、人生の黄金時間に当たる大学生活を送られている方に向けて、自分自身が大学生の時に知っていたら嬉しかったな的な知識を発信しています。

3年半バックパッカーで世界を旅した経験と今まで3千冊以上の本を読んで学んだことをベースに記事を書いています。

久しぶりの本要約です。

今日要約するのはデービッド・アトキンソンさんの書かれた「日本企業の勝算」です。

個人的に「経済」と「日本の生産性(の低さ)」には以前から興味があり、この本を手に取りました。

アトキンソンさんの経済に関する知見は、英語で書かれた理系の経済学に関する論文を読み込むことで、データから見た日本の世界に対する立ち位置を非常に詳細に分析しているところからきています。

数値やデータで示されるので根性論とは違い、なるほどと納得させられる説得力がありますね。

なぜ日本経済がやばいのか。そしてそれを改善するためには何をしたらいいのか。非常にわかりやすく具体的に書かれています。今日の記事を読んで興味を持った方は是非、本書とそれ以外のアトキンソンさんの書かれた本も手にとってみてもらえたらと思います。

それでは、早速参りましょう。




日本のデフレ要因:需要サイド

なぜ日本は長らく続くデフレから脱却できないでいるのか。そしてこれからの日本経済を考えてみてもデフレが続く要因が日本には非常に多い。

まずはそのデフレを作っている要因、デフレ圧力を需要サイドから簡単にまとめます。

①人口減少によるデフレ圧力

世界的に見て有史以来経済が成長(インフレ)し続けている理由を説明するのは簡単で、それは単純に人口が増加しているからです。人口が増えるとその分生きていくための需要が増える。需要が増えるので経済が回り成長する。

人口増加は経済成長を推し進める上で欠かせない要因の一つ。(もう一つが生産性の向上。後程出てきます)

人口が減少しているということは単純に考えても絶対的需要数が減少している。需要が減少しているのだから経済が成長しない。特に日本の人口減少率は他国と比べても比にならないスピードで減少している。ここに日本経済の深刻な問題が隠れているのです。

②人口動態によるデフレ圧力

これは①と似ている内容になりますが。

人口動態とインフレ率の関係は主に不動産から発生すると言われているそうです。なぜなら人口が増えた場合を考えてみると、人口が増加すると単純に家の需要が増します。しかし不動産はすぐに供給を増やすことはできないので価格上がる。

しかしこの問題は建築が進めば次第に需要と供給がマッチするので解決される。

次に逆を考えてみた時、人口が減ると需要が減少します。しかし不動産はそう簡単に減らすことはできないので価格が下がる。

このデフレ圧力の方がインフレ圧力より何倍も強い。(簡単に不動産の数を減らすことは難しいので)よって人口動態が急激に減少している日本には非常に強いデフレ圧力がかかっていると言える。

③少子高齢化によるデフレ圧力

これも説明するまでもないですね。高齢化が進むと高齢者を支えるための社会福祉の負担が増す。しかしそれを支えるための生産労働人口(働く人)は減っている。すると支える人の一人当たりの負担が増す。

つまり、働いていない(が支えなければならない)人が増え、働いている人の可処分所得が減るのですから、経済は縮小するのは自明の理。

④政治的デフレ圧力

働いている人は所得が上がれば嬉しいのでインフレを好む傾向にあるのに対して、働いていない人は物価が下がる方がる方が嬉しいのでデフレを好む傾向にある。

働いていない人、つまり引退した高齢者はデフレを好むということになり、日本ではそんな高齢者が圧倒的に多い。すると政治は支持してもらわなければならないので、人口ボリュームの多い高齢者に有利な政策をしようとする。つまりデフレを支えるような政策。

しかしあからさまにはできないので、インフレを産まない(もしくは起きづらい)政策をしようとする。

⑤産業構造変化によるデフレ圧力

 国の平均年齢が若いと消費につながるので製造業が盛んになるが、国の平均年齢が上がると主要産業が製造業からサービス業に移るというデータがあります。

サービス業は人が必要であり尚且つ生産性の低い産業。生産性の低い産業は所得上昇を妨げるのでデフレ圧力となる。




供給要因

次に供給サイドからデフレ要因を検討します。

①企業の競争によるデフレ圧力

人口が減少すると需要が減少します。需要が減少すると、少ないパイを取り合うために企業の競争は激化します。

競争には価格を下げる競争と品質を上げる競争の二つがありますが、経済がデフレの中では品質が良くて高いものより、少し悪くても安いものを選ぶ傾向が強いので価格を下げる競争に陥る。

価格が下がると利益が下がるので生産性を下げる。また企業は利益を保つために人件費を下げようとするため、労働者の所得も下がる。そしてこの悪循環がデフレ圧力となる。

②労働分配率の低下によるデフレ圧力

労働分配率とは企業が付加価値をどれだけ労働者に分配しているかという指標です。まあ労働分配率の考え方は難しいので、詳細は省きますが。要はどれだけ労働者に還元しているかと考えてもらえればと思います。

日本企業は上でも書いたように賃金を下げることで利益を確保しようとする戦略を長らくとっていたことを考えると、労働分配率は低いと想像できると思います。労働分配率が低いと労働者の所得も士気も下がるので、それがデフレ圧力の要因の一つとなっている。

③最低賃金低下によるデフレ圧力

日本は最低賃金を上げていこうという動きは見受けられると思います。しかし、日本の最低賃金は世界的にみてもかなり低い。当然、最低賃金が安いと企業はそれをベースに人件費を決める。人件費はそのまま労働者の給料となるので、お給料は安くなってしまう。

お給料が安いと可処分所得が低くなるので、当然消費は換気されずにデフレ圧力となる。

④低賃金外国人労働者によるデフレ圧力

日本人の人件費のみならず、海外の実習生を招き入れて安い賃金で働いてもらっている実態もある。これもまた、上で説明した通りデフレ圧力の一つとなっている。

経済成長の要因は人口増加と生産性向上の2つ

経済の成長を促す要因は主に二つある。

  1. 人口増加
  2. 生産性向上

世界が有史以来経済成長を続けている要因は単純に人口が増え続けることによって生まれる需要からきている。もう一つは、新しい技術進歩が生産性を向上させることで経済成長を促している。

大きく分けるとこの2つとなり、これまで培われてきた経済学というのは、この土台をモデルにしている。つまり、人口が増えていくことが前提とされた世界で経済学は発展してきた。

日本が積極的に実施している量的緩和もその一つで、人口動態的に人口が増えているときのモデルとなる。人口減少時は量的緩和政策の効力はそれほど発揮されない

経済とは人々の活動が前提として培われる学問である以上、人々や世界の動向の変化と共に経済学も変容していく必要がある。

これまでの50年間世界経済の成長率は3.6%

3.6%の成長のうち半分は人口増加要因、もう半分は生産性向上要因となっている。

しかしこれから人口は減少に転じるため、今のGDPを維持するためには生産性を上げる必要がある

日本のGDPは世界3位でありながら生産性においては28位ということは、圧倒的に人口に頼っているモデルだったといえる。

日本の生産年齢人口は2015年から60年で3200万人減る。これはイギリスの労働人口と一緒の数字。加えて高齢化による大量無職者を抱えることになる日本。社会保障問題を考えると余計にGDP維持が必要であり、そのためにはどうしても生産性を上げなければならないことは自明の理である。




High / Low road capitalism 

日本はLow road capitalismの国。これは日本語に訳すと「低次元資本主義」もしくは「低付加価値・所得資本主義」と呼ぶ。

ローモデルは価格競争モデルであり、ハイモデルは価値競争モデルとなる。つまり、安かろう悪かろうを薄利多売するのがローモデルであり、高品質高価格なものを売るのがハイモデル。

日本は安かろう悪かろうではないかもしれないけど、高品質なものまで安く売ろうと努力する国。しかしローモデルだといつまで経ってもデフレから脱却はできない。

輸出

これからの人口減少社会で国内の需要が見込めないのであれば輸出は必須。生産性の高い企業は輸出しているということがデータでも明らかになっている。

日本の産業の中で輸出に成功しているものがある。それが、観光。観光は一種の輸出と同じ。日本はどんどん世界中に産業を奪われていく中で、潤沢な観光資源を利用した観光産業を伸ばすことはこれからの日本にとって非常に重要になってくる。

中小企業が多すぎる問題

日本には中小企業が多すぎる。中小企業(企業規模小さい)と生産性の低さには相関関係がある。その理由としては下記のようなものが挙げられる。

  • 企業規模が大きいと一人当たりの設備が充実する
  • 1人休むと回らない。2〜3人いれば問題ない。
  • 新しい技術を共有できない。共有できる。

それでは多すぎる小規模な中小企業問題をどうすれば良いかと考えたら、統廃合しかない。現在は自然淘汰が起きないような構造になっているが、規制などを撤廃して自然淘汰により統廃合を促す必要がある。

生産性向上五つの要素

これまでに述べたことをまとめて、アトキンソンさんは生産性を向上させるための5つの要素を提言しています。

  1. アントレプレナリズム、、、リスクを取る人。
  2. 労働者一人当たりの物的資本増強
  3. 社員教育・スキルアップ、、、新しい技術使って生産性向上
  4. 技術革新
  5. 競争(価格ではなく価値で)

この5つの要素、僕なりに解釈をしてみると日本人にとって全て選択するのは難しそうだなと思いました。

日本は遺伝的にみてもリスクを取る人が少ない人種であるので①は難しそう。

0→1よりも1→100が得意な日本人には④の技術革新を起こすよりも、生まれた新技術をうまく活用する法が得意そう。

⑤に至っても、日本人はあまり他人から利益を取ろう、取りたいと考える人種ではない(水道理論)ので、高品質も安価に提供してしまう、、

これらの消去法でいくと、日本に合っているのは②の統廃合して大きな企業を作ることで一人当たりの設備を潤沢にすること。そして③の社員教育(リスキリング)により新技術のスキルもアップして生産性を向上させる

この2つが日本人には合っているのかなと個人的には考えます。




最後にアトキンソンさんの主張

①生産性向上にコミットしてHigh road capitalism 高品質化

②企業規模拡大と統廃合

③最低賃金の継続引き上げ

個人的な意見として

確かに日本は零細企業と中小企業が非常に多すぎる。それは戦後とにかく人を雇うことが推奨されたときに生まれた企業なのだろうけど。

今は経済のフェーズが変わっているので、日本の産業全体としても変わらなければならない。

そして自然淘汰が起きない(起こさないようにする規制)は日本を弱くだめにしてしまう。

50人の企業が二つあったとしたら統合して20人解雇する。そして80人で二つの企業の合計利益を超える企業が生まれれば、これは生産性が向上したといえる。そうすれば雇用は減っているのだから賃金を上げることもできる。

もちろん解雇された20人に関してはフォローが必要かもしれないけど。もしかしたら会社にただいるだけで何もしない人は給料泥棒と変わりがないので、そうした人は解雇した方がいい。

こんな風に自然淘汰をベースにして、少し残酷ではあるけど統廃合をすることで大きくて強い企業にまとまっていった方が、全体としての生産性は向上して、賃金は向上して、経済は向上する。

一時的に人件費が向上することで利益がすくなるのであれば、そこに危機感を覚えて経営者が生産性に本気で取り組むようにもなる。

多分、日本は他国に比べると労働環境的にはずっとぬるま湯に浸っていたのだろう。

少子高齢化の最前線にいる日本こそ、本気で頭を切り替えていかないと、世界的に衰退は目に見えている。経営者のみならず、労働者一人ひとりが全員「生産性」にコミットして、日々の業務から無駄なもの惰性でやってるものはどんどん排除した方がいい。

って話でした!


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